「混んでるなぁ。」
「混んでりゅねぇ〜。」
あまりの人の多さに唖然として、打ち合わせもなしに「…」エモが揃ってしまう2人。
クロガネとアカガネは、今日プロンテラへ「おつかい」にやってきたのだ。
いや、彼の名誉の為にあえて言うなら、クロガネはアカガネの「子守り」として付いてきたのだが……。
「だから、プロは苦手なんだよ」
いつもラグるしなぁ。とひとり愚痴りはじめる。
「おにーたま。こっち、こっち。」
いつの間に移動したのか、アカガネは裏路地に差しかかる所で、まだ南門の前にいるクロガネを手招きしていた。
コロコロコロ……。コロコロコロ……。
空っぽとはいえ、まだ幼いアカガネがカートを引いて歩くとどうしても人より歩みが遅くなってしまう。
そんな姿をみて、代わってやりたいんだけどな、そんなことしたら、チートになっちまうもんな。とアカガネを追い越さないように気遣いながらクロガネは歩調をあわせていた。
「しっかし、よくこんな道知ってるよな。」
「うんっ。だって、毎日通ってるもんっ。」
相場調べはマーチャントの鉄則だよ〜。と自慢げに腰に手を当て、胸を逸らすしぐさを大げさにしてみる。
かくいう彼らは、雑踏を避け、裏路地から裏路地を右へ左へと進んでいく。
慣れていない者なら、方向感覚が鈍るであろうその曲がりくねった順路を間違えることなく歩くのは、やはり歩き慣れた者の証拠。
次第に視界が晴れて行き、建物の合間からわずかにしか見れなかった空が一気に大空へと変わった。
「あ、おにーたま。ここだよ、ここ」
と目の前にある建物を指差し、意気様様に扉を潜り抜けた。
これだったら、俺が付いてこなくても大丈夫だったかな。とクロガネはふと思った。
小さいと思っていた少女は、自分たちが思っているよりも確実に成長している。
高い塀を建てて大空を見上げていたのは俺達の方だったのかもしれない。と気づかされるそんな一日であった。
ビル=高い建物=塀 とみたてて心の壁という印象で書いてみました。